【浮世絵つき】映画『ムタフカズ』を3分レビュー

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こんにちは、IWAっす。

今回の浮世絵付き3分映画レビューは
『ムタフカズ』です。

 

原作は、
ギヨーム”RUN”ルナール作の
バンド・デ・シネと呼ばれる
フランス産のコミック。

アニメーション作画を担当したのは
みんな大好き『マインド・ゲーム』、
『鉄コン筋クリート』などを
手掛けたSTUDIO4℃。

『鉄コン』で総作画監督を務めた
西見称示郎の満を持しての
長編監督デビュー作となるっす。

 

原作者”RUN”(仏版監督兼任)と
コンテンツ制作会社ANKAMA(仏)の
ラブコールによって
作画をSTUDIO4℃が担当し、
最終的な仕上げ・調整はANKAMAが
手掛けるというやや”面倒”な工程を
経ているそう。

そんな、
フランスと日本の夢の合作である
この『ムタフカズ』。

浮世絵風イラスト付きで
サクッとレビューしていきます!

※ネタバレは多め

 

あらすじ

犯罪と失業者が溢れかえる街DMC【ダーク・ミート・シティ】。
22歳のアンジェリーノ(日:草なぎ剛、仏:オレールサン)はピザの配達中に魅力的な女の子ルナ(日:上坂すみれ、仏:ケリー・マロット)に一目ぼれをし、その後交通事故に巻き込まれる。
その日からアンジェリーノには常人には見えないものが見え始め、遂には警察や謎の組織に追われるはめに。
やがて身体的特殊能力に目覚め、友人ヴィンス(日:柄本時生、仏:Gringe)やウィリー(日:満島真之介、仏:レドアン・ハルジャン)を巻き込み決死の逃走劇を始めるが…。

 

戦うべきは自分の生い立ち

どん底の環境で生まれ育ち、
両親も知らず、希望も捨て、
ただひたすら泥水の中で暮らす
若者が自らの選択を迫られる
普遍的な物語

 

主人公のアンジェリーノは、
天からやってきた宇宙人と人間との
間に生まれた生い立ちや、
名前(Angelino)からも分かる通り
彼は天使=神の子だ。

(啓示や信仰のモチーフが
劇中何度も登場するのはそのため)

そんな彼が、
人間として生きるか・
それとも人間性を捨て地上を征服する
神の一員として生きるかを
彼自身が選ぶ成長譚となっている。

 

彼自身が”納得のいく自分“になる為に
奔走し、戦い、逃げ出し、それでも
やはり自分はこの掃きだめの様な場所で
自分なりに生きていくと決断する姿を
見ると、
『ムタフカズ』は誰もが経験する
人生のターニングポイントを描いた物語であることがよく解る。

だからこそ、
この映画が終わる頃に観客は
アンジェリーノやヴィンスのことを
愛おしく思い、この先の彼らの未来を
応援したくなるのだ。

 

あ、ウィリーはかわいいだけのやつです。

背景美術によって感情移入させる神業

『鉄コン』の頃より
数十倍アップグレードされた
今作『ムタフカズ』の作画
(特に背景美術)は、
その凄まじい情報量と描き込みにより
各キャラクター達の性格を視覚的に
伝える重要な要素の一つになっている。

 

例えば、
アンジェリーノとヴィンスの部屋のトイレ。

物語上、
彼らの部屋のトイレを描く必要は
全くと言っていいほどない

しかし、手入れがされていない
彼らの不衛生なトイレを一瞬映すことで
その後のアンジェリーノの
「家賃を二カ月滞納している」という
台詞にこれ以上ない説得力を持たせ、
怠慢な彼らのキャラ造形を一際引き立てている。

このような、
“背景美術とキャラクター造形の連動”
の積み重ねにより、
『ムタフカズ』は台詞や展開以外で
キャラクター愛を観客に訴求する
という神業をやってのける。

 

同様に、
中盤のアイスクリームカーでの
カーチェイスの場面では、
床に散乱するアイスクリームと
後部窓ガラスの破片を描くことで
“どうあがいても手詰まり”という
キャラクターの心情までも
絶妙に表現しており見事と言うほかない。

 

また、不穏な雰囲気の場面では
画面全体を細かく揺らしたり、
スローモーションを使って
人物の位置関係を観客に把握させる等
実写映画の様な手法も取り入れており
従来のアニメーションとは違った
スリリングさも特徴の一つで大変面白い。

 

 

余談だが今回の鑑賞にあたって、
偶然僕のInstagramのフォロワーに
背景美術製作の西村美香さんが
いらっしゃったので貴重なお話などを
聞くことができました。

この場を借りて、お礼申し上げます。
ありがとうございます。

まとめ

今回の浮世絵付き3分映画レビュー
『ムタフカズ』編のまとめはこちら。

・奇天烈な設定とは裏腹な青春群像劇に共感

・背景美術とキャラクター造形の連動が緻密で登場人物への愛に溢れている

・刊行途中の原作とはいえ、物語はやや消化不良で続編ありきな点がやや不満

 

今回は以上っす!

描き込まれた背景や作画を
見るだけでもお金を払う価値は
十分にあるかと思います。

物語の脇役たちの内面までも
丁寧な描き込まれ方をしており、
製作陣の原作への愛を感じずには
いられません。

是非参考にしてみては
いかがでしょうか。

それではまた次回!

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