【浮世絵付き】『エイリアン:コヴェナント』を3分でレビュー

映画『エイリアン:コヴェナント』 浮世絵風似顔絵

逃げろ!IWAっす!
今回の3分映画レビューは『エイリアン:コヴェナント』っす!

 

『プロメテウス』から5年、タイトルに『エイリアン』が入る正統作品としては20年ぶりに制作された今作。
当初の予定では、今作と同時並行で『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督が『エイリアン2』の続編(3・4作目は抹消…)を担当する予定だったんすが、企画自体がぽしゃってしまったようっす。
もし実現していれば、前日譚と後日譚が同時期に公開されるという夢の未来が実現していたかと思うと少し残念っす!

何を隠そう『エイリアン』シリーズの大ファンであるIWA。
1作目に心奪われ、2作目に熱狂し、3作目で一度目が覚め、4作目には震撼したっす。
『AVP』も最高っすよね!1作目だけね!

 

ついに満を持しての公開となった『エイリアン:コヴェナント』!
IWAも半狂乱でこの日を待ってたっす!

初日突撃のために、当然会社は休んだっすよ!
当ったり前じゃないすか!!(怒)

 

それでは3分映画レビュー!
“I’ll kill you BITCH!!”

 

※前作・今作の核心に触れる記述があります

“神の座”の椅子取りゲーム

人類の新しい移住惑星オリガエ6を目指して、宇宙を航行中のコヴェナント号。
コヴェナント号にはコールドスリープ中の15名のクルーと入植者2000名、1140体の胎芽を乗っていた。
予期しない宇宙フレアの影響で船内システムが故障し、アンドロイドのウォルターの判断によりクルーはスリープ状態から目覚めるが船長が事故で死去してしまう。
失意の底にある船長の妻である、ダニエルズとクルー達。
そんな中、人類の生存環境に適した惑星が偶然近くに見つかりクルー達はにわかに沸き立つ。
調査の為に惑星に降り立つ一行だったが、謎の病原菌に感染したクルーの一人の体から産まれた”何か”が彼らを襲い始める。

 

『エイリアン』シリーズの魅力とは、人の手の届かない未知なる宇宙空間内に完璧にデザインしつくされた人工物が突如出現する違和感だと思っている。
この違和感が、
「広い孤独な宇宙の中に人間(もしくはそれ同等の知能を持った生物)がいる!」
という一種の安心感に繋がっていく。
そして、その”母”船の内部をオチンチン頭が荒らしまくるため『エイリアン』シリーズ全作を通してレイプのメタファーが強く感じられる。

そのイメージを払拭したのが前作にあたる前日譚『プロメテウス』だ。
シリーズ中初めて調査隊が船の外に出ていく物語であり(『AVP』は除く)、同時に今までのトリロジーと差別化を図る為のリドリー・スコット監督の宣言作だった。

 

今作の序盤、太陽光充電用パネルが寄木細工の様に展開されていく計算されたギミックを見た瞬間、美しすぎてため息が漏れた。

そんな気分も束の間、あまりに残酷な仕打ちが主人公ダニエルズを襲う。

ここで観客はあることに気付く。

予告編で使用されていた、地球出発直後にクルー全員が祝杯をあげる多幸感溢れるあのシーンが丸々カットされている。
それどころか、劇中ではクルー14名が7組のパートナーである設定の説明がほぼされていない。

そのため、予備知識無しで観た者は物語の進行と同時にそれぞれのカップリングを確認していくことになる。(ゲイカップルが二組いることにどれだけの観客が気付いただろうか)
やや説明不足的なこの演出の裏には、人間側に感情移入をさせない為の狙いがある。

何故なら『エイリアン:コヴェナント』は、人間の創造物が自身の神々を淘汰していく”神話”の序章を描いているからだ。
『エイリアン』シリーズ全般に共通する、
“これだけ人が殺されているのに、なぜか超アガる”感覚。

この不思議な高揚感の原因は「新しい種が既存種を淘汰し、宇宙の生態系が更新されていく現場を目撃している」という錯覚を覚えるからだ。
今作はその感覚を保たせつつ、以下の様な多重構造をプラスしている。

1.エンジニア(絶対神)が創った人間
2.人間(第二神)が創ったアンドロイド
3.アンドロイド(第三神)が創ったエイリアン群

そしてこの神格順位最下位であるアンドロイドが、上位の神々に反旗を翻し自分こそ神であるべきだと行動を起こしていく。

この”神々の戦い”的要素を加えたことにより、”産み出されたモノ達”が種の保存の為に”神の座”を争う深淵な物語となった。

 

そんな”神話”の中では、人間などちっぽけな存在であり感情移入の必要などないとでも言いたげな程に、人間に対しては突き放した描写をしている点が潔い。
これまでのトリロジーは、新種(エイリアン)による既存種(人間)の淘汰までを描いているが、今作はアンドロイドによる文明の開拓というテーマにまで踏み込んでいる点が非常にワクワクする。

やはりゼノモーフが出てくるだけでファンとしては無条件で万歳をしたくなる位そのデザインは超カッケーのだが、今回特筆すべきは新種のネオモーフだ。
とにかく怖い!おぞましい!キモイ!という最高の誉め言葉を送りたくなるほど、この新種の存在感たるや今作のアイコンとして立派に機能している。

 

個人的なおすすめシーンは、ある女性クルーが体を洗うために洗面台に立っているシーン。

“一人きりになると100%死ぬ”というホラー映画のうさぎちゃん的法則にならい、案の定何かの気配を背後に感じる女性クルー。
振り向いたそこには、ネオモーフの顔のアップが。

(「ぐぎいゆうういいいいいい!!」)

心の中で声にならない悲鳴を上げたIWAに漏れず、このシーンでは冗談抜きで劇場中が息を飲んだ音が聞こえた。
必見のホラーシーンである。

ラストも最高に後味が悪い(良い意味)終わり方になっており、ファンにとっては堪らない代物である。

 

気になった点としては、冒頭のウェイランド社のシーンは前作『プロメテウス』に付けるべきだったと感じる。

あまりにも話を混ぜ込み過ぎな前作にこのシーンが付けば、一本筋が通った解りやすい作品となったのにと惜しく思う。
また、相変わらず「危機管理」という言葉を知らないクルー達は、ヘルメットもつけずに未知の惑星をうろうろ。

未開の土地の植物にもグイグイ迫り、そこから謎の病原体に感染してはハアハアする。
「いくら何でもそれは君たちが悪いんじゃないかな」と観客の冷静なツッコミ待ちのような姿である。

人類の未来を肩に乗せた状況でも感情的な判断を優先するクルーなど、何故お前がミッションに選ばれなくてはいけなかったんだと言いたくなる。
神話の中で淘汰されていく滑稽な人間像を描きたかったと言われればそれまでだが、主人公のダニエルズにだけはもう少し感情移入の要素を入れても良かったのではと若干不満が残る。

 

とはいえ、ファンとしてはもうこれ以上ない程の楽しい経験をさせてもらった。
伝説の第1作の雰囲気の再来であるとも言えるし、エイリアン自体をストーリーの副産物として据えながら世界観の拡張を図った快作でもある。

とりあえず、リドリー爺様最高だよありがとー!!
という言葉で締めくくることにする。

 

今回はここまでっす!
今作のキャッチコピーは”絶望の産声”でしたが、
IWAの腹が空腹の産声をあげているんでそろそろこの辺で!

 

2017.9.18

Kenji Iwasaki

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