【浮世絵付き】『永遠のこどもたち』を3分でレビュー

 

映画 浮世絵 似顔絵 永遠の子どもたち

ハーイ!
心は永遠にこどものIWAっす!チャーン!

今回は『永遠のこどもたち』を3分でレビューっす!
傑作『怪物はささやく』のJ・A・バヨナの長編デビュー作っす!
この監督は本当に子供の描き方がうまく、映画全体が大変愛しい印象になっているのが特徴っす。
そんなショタコン子供大好きバヨナ監督、今作をどう仕上げたのか!

 

それでは10秒映画レビュー!だるまさんがコロンダー!

※作品の核心に触れる記述があります。

そして母になる

自分が生まれ育った孤児院の洋館に家族と共に移り住んだラウラ。
この洋館を養護施設として建て直そうと奮闘するラウラだったが、彼女には息子のシモンにまだ打ち明けられない秘密があった。
そして施設の開演パーティーの日、シモンは夫婦の前から忽然と姿を消してしまう。必死に息子を探す二人の前に、洋館にまつわる忌まわしい過去の出来事が浮かび上がってくるのだった…。

 

“スペイン版だるまさんが転んだ”で始まり、こどもたちが1人ずつフレームインしてくる冒頭。
このシーン1つで、今作品の演出面がいかに丁寧に作られているかがわかる。
温かな日差しの中で、今度は鬼ごっこをしながら駆け回るこどもたち。
「つかまえた!」
幼少時のラウラの台詞と共に、舞台が現代へ切り替わる。

後にこの冒頭のシークエンスは、終盤のトレス演出であることがわかる。
冒頭は温かく幸福感に満ちているが、終盤の同質場面は身も凍るようなホラー演出である。
大変意地悪な二段階構造だが、観終わってみるとどちらの場面ともとても愛しく感じた。
それは、天涯孤独な人物に寄り添う作品的視点の賜物だ。

 

丁寧な演出といえば、ラウラが開催するほとんど悪夢と言っていいほどの開園パーティーの気味の悪さである。
入園を希望している障がい者とその家族が映し出されるのだが、明らかに悪意のこもった狂気的な撮り方をしている。
全く意味の無い仮面を被らせる演出など、さすがにやり過ぎなのではと思うシーンだ。
何故このパーティーはこんなにも薄気味悪いのか?

それは、「このパーティ以降作品どんどんダークになりまーす!」
という丁寧過ぎる暗示の為だ。
実際このシーン以降に息子のシモンは姿を消し、夫婦の悲劇が始まる。
上記のように、
①冒頭の温かな幼少期時代
②パーティー前までの状況説明的日常シーン
③シモン行方不明以降の陰鬱な日々
④ラストの死後の幸福感
この4つの劇中内チャプターで構成された今作。

ここから見えてくる、”幸福であるためには、子供時代に留まるか死ぬしかない”という『パンズ・ラビリンス』から続く一つの理念。
彼自身が永遠の子供であるギレルモ・デル・トロから脈々と受け継がれる理念であるが、
『永遠のこどもたち』こそそのテーマの到達点と言える。
なぜなら、過去から立ち上がり精神的に自立していたはずの大人の主人公ラウラが、
最終的にこどもたちの魂と邂逅し、疑似母親的存在となり永遠に”過去”に閉じ込められるという顛末だからだ。
ピーターパンのモチーフを前面に押し出しているあたり、非常に徹底した作りだ。

 

物語の推進力は、ラウラとペニグナという2人の母親の存在である。
この2人の母親。一見相入れない存在同士に見えるが、息子を思うその行動原理は同質のものである。
ただし、悲しいことに両者とも”息子の守り方”に関しては致命的な欠陥がある。
そう、両者とも決して目の前のありのままの息子の姿を認めようとしていないのだ。
ここがそもそもの悲劇の発端であり、物語全ての元凶である。
そして最終的に2人が自身の責任をそれぞれとる、という話が今作なのではないかと思う。

 

孤独だった主人公が、同じ境遇の息子の孤独感から目をそむけてしまったが為に大切な息子と自身の命すら失ってしまう。
その罪に気付き、永遠に息子の傍にいることを選び自ら命を絶つ。
『パンズ・ラビリンス』は主人公の自己犠牲で高次の存在となるが、
今作は主人公が自ら死を選ぶ贖罪の意味合いが強いため、『パンズ~』より共感を得やすいのではないだろうか。

 

その他、特筆シーンとしては終盤の”恐怖のだるまさんが転んだ”シーンだ。
このシーンは固定カメラをパン(左右に振ること)することで、徐々にこどもたちが近づいてくる様子を演出している。

「こえーーーー!!あ、でもゾクゾクして気持ちいーーーー!!」

と、ある種のオーガズムに達してしまうほど美しい構図と恐怖感だった。
このシーンを観て思い出したのは、M・ナイト・シャマラン監督の『ヴィレッジ』。
森の中のアイツが近づいてくる堪らない恐怖感を、幾分アップデートしたようなシーンである。

おそらく過去のこどもたちが初めて姿を現すこの場面は、監督自身も相当気合を入れて撮ったのではないだろうか。
それほど恐怖感と構図的完成度が高く、作品中随一のシーンとなっている。

 

名シーンと言えば、ラストの旦那のカルロスの表情。
これが、”ラストに最高の表情をする系の役”としては
名作『グッドウィル・ハンティング』のベン・アフレックに次ぐ素晴らしい表情をしており、こちらも必見だ。

欲を言えば、ラウラと他のこどもたちとの幼少期のシーンがもっと見たかった。
一つでもそういったシーンがあれば、ラストの対面シーンの感動の度合いはもっと大きかったのでないか、と少し惜しく思った。

 

それでは今回はここまでっす!
次回もお楽しみにっすー!ばぶー!!

 

2017.9.11

Kenji Iwasaki

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