【浮世絵付き】『怪物はささやく』を3分でレビュー

映画 浮世絵 似顔絵 怪物はささやく
(どうも、IWAっす)
(現在ささやいています。あなたの心にささやいています)
今回は『怪物はささやく』を3分映画レビューっす!

 

もう言っちゃう、全IWA騒然の拍手喝采の傑作!!

イギリスのベストセラー児童小説の映像化である今作。
『永遠のこどもたち』で名をあげた、ギレルモ・デル・トロ組の新鋭J・A・バヨナによるダーク・ファンタジーっす。
“孤独な少年が何かをきっかけに少し成長する”系の物語には目がないIWAは、この作品をどう観たのか!
原作との相違点にもちょこっと言及するっす。

 

それでは3分映画レビューに向かって走るっす!

※作品の核心に触れる記述は多め

必見の演技合戦

母親と二人暮らしの13歳のコナー少年。
彼を悩ませているのは病に侵されていく母の容体と、毎晩見る悪夢だった。
ある夜、彼の前にイチイの樹の怪物が現れた。
怪物はコナーに3つの物語を聞かせるという。
そして、4つ目の物語はコナー自身が語る様に怪物は要求するのだった。

 

劇中で「虚構」と「現実」が入り乱れる類の作品は、納得できる結末に着陸させることに関して難易度が高いと言っていい。
何故ならそういった種類の作品は、「虚構」の為の「現実」、
または「現実」の為の「虚構」、といった様にとかくテーマが一方通行になりがちだからだ。

例えば、劇中での「虚構」を成立させる為に描かれる「現実」の場面や、「現実」の場面を際立たせる為に描かれる「虚構」のシーン。
これらは、「虚構」と「現実」どちらか一方がもう一方の補助的役割として機能することで成り立つ構図だ。
つまり、必然的に「虚構」と「現実」の双方のテーマ性が合致することは稀であり、作品としてのロジカルな結末を導き出すことは極めて難しい。

しかし今作では、ある人物がいわば全ての物語的起点となったことで、
「虚構」と「現実」双方が必然性を帯びる大変素晴らしい構造になった。
これは原作小説にはない映画独自の脚色である。
この脚色を加えることにより、「ふしぎな夢物語」である原作に比べ、今作は現実感という一本の筋が通った。

その結果、「虚構」と「現実」が必然的に呼応し、その二つが渾然一体となり全編が価値ある物語として機能した。
そのため児童小説が原作だが、大人の鑑賞に耐えうる上質な作品へと昇華した。
恐るべき完成度である。

 

主演のルイス・マクドゥーガルくんの、怒りと孤独を秘めた瞳が大変印象的だ。

彼の起用がなければこの作品は絶対に成立しなかった、と言える程に観客を魅了する。
彼と、さすがの演技力であるシガニー・ウィーバーとが車内で繰り広げる対話シーンは涙なくしては見られない名場面だ。
女帝シガニーの存在感に負けないルイスくんの演技は必見である。

誰かの物語の終わりは、別の誰かの物語の始まりである。というメッセージを温かく説いている。
個人が内から外へ向き合う力を獲得する過程を、たくましく繊細に描き切った揺るぎない名作。
幼少期に孤独感や疎外感を感じていた人にとっては、間違いなく大切な作品になるはずだ。

 

それでは今回はここまでっす!
100年絵を描けたらいいのに~!

ひそひそ…(次回もお楽しみに)ひそひそ…

 

2017.9.7

Kenji Iwasaki

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